オランダでは近年、福祉・雇用政策をめぐる改革が進行しており、「オランダモデル」との呼称もある。その背景と仕組みを理解することで、日本を含む先進国の社会保障・雇用改革の行方を考えることが可能となり、持続可能な福祉・雇用社会を構想する上でのヒントが得られると考えられる。
オランダでは80年代以降、政府・労組・雇用者の3者の協調のもとでさまざまな労働市場改革・社会保障改革が進められ、労組は賃金の抑制、雇用者は労働時間の短縮をそれぞれ受け入れたほか、社会保障制度の改革に向けての道筋が作られた。そして90年代に入るとオランダでは失業率の低下、財政赤字の縮小などを達成し、近隣諸国から「オランダモデル」とさえ呼ばれている。特にいわゆるワークシュアリングの手法を用いることで、失業率の低下と就労人口の増加を達成したことが特徴的だ。日本の社会保障制度は、従来のオランダの制度と共通点もあり、改革のあり方を考えるうえで、オランダの改革は多くの示唆を与えるだろう。