新藤 宗幸
(しんどう むねゆき)

 

千葉大学法経学部教授/行政学

 

■「持続可能な社会」は政治の論争から

 

  なにが「持続可能な社会」であるのか、それは政治の対立ないし対抗軸として社会的に論争されるべき事柄である。だが、9月11日に予定されている衆議院総選挙をめぐる政党間の言動をみても、こうした対抗軸は消えうせている。中央・地方を通じて1000兆円を超える負債を抱えこんだ社会は、それ自体「持続可能な社会」から程遠いのではないか。わたしの専門は行政学、政治学だが、ここまで負債を積み上げてきた政治行政構造について分析をすすめてきた。「福祉行政と官僚制」「技術官僚」「地方分権」といった拙著は、その作業の一環である。だが、政党政治には「糠に釘」のような状況であろう。個々の生活、地域の原点から政治社会のシステムへの問題提起が問われている。その意味で、「臨床の知」(中村雄二郎)を踏まえた制度デザインと逆によれによる地域の躍動を、大学などにおける研究活動の原点としていくべきだろう。