工藤 秀明
(くどう ひであき)

千葉大学法経学部教授/環境経済学

■環境社会経済学(エコロジー経済学)

 経済システムは本来、より包括的な社会システム、さらにはエコシステムの内在的で有機的な一環として成立し、社会的およびエコロジー的な公正を体現する限りで持続可能なものとなるであろう。しかし、遍く人々の福祉の達成を課題とする経済活動が、異質の活動に取り違えられることによって、システム総体の衰退がもたらされた地域、国家、文明は歴史上少なくない。エコノミークとクレマスティークとの混同に対する万学の王の警鐘以来、経済学の歴史もある意味では、そのような混同=その進行がもたらすシステム危機と、新たな社会・自然認識を基礎としたそれに対する批判=救済努力との、反復であったといえるかもしれない。21世紀を迎えた今日、公共性理論やエコロジー・エントロピー論などに基づく新たな社会経済学や環境経済学の模索が進められている。それらに学びながら持続可能な福祉社会の条件を模索したいと考えている。