「公共性のパラドクス:現代オランダにおける労働・福祉・移民」
 オランダでは、2002年選挙における新右翼政党フォルタイン党の躍進を契機として移民・難民政策の厳格化が急速に進行し、外国人排除の動きが顕在化している。この動きを支えたのが、移民の「福祉依存」を批判し、「福祉国家を守るために」移民を排除すべきとする福祉排外主義の広まりである。そもそも戦後のオランダでは、労働組合の政策参加を促す政労使協議制(ネオ・コーポラティズム)の発展を背景として、スウェーデンと並ぶ高度の福祉国家化が実現されており、包摂性の強い平等主義的な政策が展開されてきた。しかし実は、これらのネオ・コーポラティズムや福祉国家という「公共的」な枠組みのなかに、移民やマイノリティを排除するロジックが内包されていたのではないか。本報告では以上の問題意識に基づき、「公共性」の持つ「反公共的」作用というパラドクシカルな構図を明らかにすることで、現代先進諸国の政治経済体制が抱える構造的な問題を解明する手がかりとしたい。

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