「比較制度論の視点と<労働−福祉ネクサス>」


今日の労働市場改革と社会保障制度改革との関連を<労働‐福祉ネクサス>というコ ンセプトで国際比較するための方法的フレームワークを構築するために、おもにヨー ロッパでの比較経済制度論の新動向についてサーヴェイする。とくに、P. A. ホー ル、D. ソスキスらの<資本主義の多様性>アプローチ、G. エスピン・アンデルセ ン、B. エビングハウスらの比較福祉資本主義論、R. ボワイエ、B. アマーブルらの レギュラシオン・アプローチについて、雇用レジームと福祉レジームとを関連づける 理論的視点、<労働‐福祉ネクサス>を国際比較するさいの方法的準拠枠に焦点をあ てて検討する。ソスキスらの<資本主義の多様性>アプローチが、<比較優位の制度 的基礎>を問うという問題構成のもとに雇用保障・失業補償と企業コンペタンス・技 能形成との関連づけを論ずる比較制度論であるのに対して、エスピン・アンデルセン らの権力資源動員論、アマーブルらの社会的コンフリクト論が、新自由主義のワーク フェア戦略と社会民主主義のflexicurity 戦略、アクティベーション戦略との対抗を 論ずる比較制度論であることを明らかにしつつ、二様の研究プログラムの対照性と補 完性、両者の接合可能性について考える。