▼公共政策・公共哲学部門ジョイント対話研究会
「グローバル・タックスと持続可能な福祉社会:通貨取引税、航空券連帯税の可能性」報告

 環境破壊、貧富の格差、紛争など深刻化する地球規模の問題を惹起している本質的な原因の一つに、巨大化する金融資本や多国籍企業があります。これらにいかに対処すればよいのか−その答えの一つがトービン税・通貨取引税を含むグローバル・タックスです。これは、グローバルな動きに対してグローバルに課税し、税収をグローバルに再配分するメカニズムです。
 本COEはこうしたグローバル・タックスの重要性を認識し、2006年5月26日にこの分野の第一人者であるソニー・カプール氏およびアンリ・ルイーユ・ドルフィーユ氏を招聘して対話研究会を開催しました。さらに、翌27日にはオルタモンド等と「東京国際セミナー2006:新しい開発資金メカニズムを考える」を共催しました。
 まず対話研究会では、カプール氏が現代国際経済における金融資本・多国籍企業の実態とその租税回避の問題等を指摘し、為替取引市場への課税を提案しました。ドルフィーユ氏は、グローバル・タックスの一つとして、航空券連帯税を取り上げました。これは、グローバル化の恩恵を受けているビジネスクラスから10〜40ユーロ、エコノミークラスからは1〜4ユーロの連帯税を徴収し、税収をエイズ・マラリヤ・結核対策への資金源にするという構想であり、氏はこの構想がいかに実現にいたったのかについて説明されました。
 国際セミナーでは、金子文夫、ドルフィーユ、ピエール・ジャケ、エイドリアン・デイヴィス各氏の報告の後、本COE拠点リーダー広井良典氏も参加したパネルディスカッションが行われました。本セミナーでは、世界の貧困削減とミレニアム開発目標を実現するために、主に新しい開発資金メカニズムとしてのグローバル・タックスの可能性と有効性が議論されました。
 以上の対話研究会および国際セミナーの詳細については、本機関誌『公共研究』をご参照ください。

2006年5月26日14:30〜17:30

於:千葉大学文科系総合研究棟2階マルチメディア会議室

(文責:上村雄彦)

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