関 谷 昇
(せきや のぼる)

千葉大学法経学部助教授/

政治思想史・政治哲学

 

■事実次元と規範次元の緊張関係をめぐって


 

 

 ホッブス、ロック、ルソーらの近代社会契約説の原理的研究とそこから導かれる理論的・実践的課題に取り組んでいる。とりわけ主体性論に着目しつつ、社会的連帯の可能性を追求しているが、それは持続可能な福祉社会における公共性の具体化条件を模索することに関わっている。「主体性(個人・自我)」とは古くから現在まで問われ続ける概念であるが、これは規範次元と事実次元との緊張関係において不断に見直しを要請されている。「個人」を表象する規範概念はつねに(抑圧と排除がもたらされているという観点において)事実次元からの批判にさらされるし、逆に事実次元の「個人」は規範次元の表象を必要とせざるを得ない。この緊張関係をいかに把えるかということが公共性の具体化条件に外ならない。そこから主権・統治・自治などをめぐる規範・制度・政策の原理的かつ現実的変容を理解することによって、現代における民主主義の可能性を模索する、ということが現在のもっぱらの関心である。