▼公共政策セクション対話研究会 第3回
<福祉環境交流センター 連続セミナー第22回>
「中国におけるNPOの展開:市民的公共性の日中比較に向けて」報告

 日本でも社会活動の担い手としてのNPOの活動が、ようやく事業体として位置付けられるようになりました。今回は中国におけるNPOの展開について、浦和大学総合福祉学部から沈 潔教授をお迎えして、その法的な根拠や改革開放という社会変動のなかでどうようにその活動が変化してきたかについて、日中両国のNPOの調査比較を交えてお話をうかがいました。
 はじめに中国におけるNPOについて、非営利的・公益的組織として行政補完の役割を果たすという定義や、その組織や活動を1)法的な根拠、2)法人格の有無、3)活動範囲、4)活動領域という分類から、データを交えながら説明されました。 次にコミュニティ・サービスの供給が、改革開放という大きな社会変動の前後でどのように変化し、NPOによる公益サービスが展開されてきた背景や期待されている役割について説明されました。社会主義的計画経済から市場経済への移行や「大きな社会、小さな政府」という行政改革によって、政府機関や国営企業から切り離された事業が、社会団体NPO・民弁非企業単位NPO・基金会NPOとして継続されているという形態としての特徴や、社区NPOによるコミュニティによる公益事業や福祉サービスが急増した失業者の受け皿になり、NPOは福祉サービスの供給だけでなく、地域開発や地域の組織化の役割も期待されているという特徴を示されました。
 市民公共性の視点から日本の福祉NPOと中国の社区NPOの特質について、高知県と武漢市の調査データを比較しながら、日本の福祉NPOは地域と行政の間を埋める市民活動組織の発展型で、事業というより活動とみなされる傾向にあること、一方、中国の社区NPOは政府や企業と同様に「広義の公益事業」の担い手として事業体としての性格が強いと指摘されました。中国では草の根の市民活動や民主運動のプロセスを経ていないため住民の自発的な参加が少なく、今後の社区NPOの発展については、公益事業体としての非営利性や公益性、効率性を維持しながら、地域住民の連帯を目指した住民主体の連合体の構築が重要であるとコメントされました。
 参加者からは中国が準市場の形成という最新のトレンドを取り入れていること、互助的な明朝・清朝時代の民間の社会福祉活動などとの関連、中国における公共意識など幅広い質疑があり、予定時間を大幅に延長して活発な対話がかわされました。

2005年4月20日 14:30〜16:30

千葉大学法経学部第一会議室

(野村眞弓)

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