▼公共政策セクション対話研究会 第6回
<福祉環境交流センター 連続セミナー第25回>
「持続可能な社会の構築:個人のライフスタイルから始める取組み〜アメリカ LOHAS 9 FORUM」報告

 「LOHAS」とはLifestyles of Health and Sustainabilityの略で、自然や環境と調和したライフスタイルを意味するコンセプトとして注目されています。今回は、去る4月末にアメリカで開かれたLOHAS 9 FORUMに参加された松下政経塾25期生の國田薫氏をお招きして、その様子をご報告いただきました。併せて、関連する日本での様々な試み等についてCOE研究員の上村雄彦氏からコメントがあり、参加者との活発な質疑応答が交わされました。はじめに「持続可能な社会」について國田氏は、“空間、時間の異なる他人の可能性、権利を奪うことなく、自らの幸せを享受できる社会”と定義され、持続可能性には環境、経済、精神という3つの視点があることを示されました。次に健康と環境に配慮したライフスタイルとして注目されているLOHASは、個人の健康、満足感、消費行動に焦点を当てたアメリカのマーケティング手法として登場したことを紹介されました。LOHAS 9 FORUMはマーケティング色の強い内容であったものの、LOHASの展開に対する草の根活動と企業との異なる立場から多様な参加者の意見が交わされたことなどを、現地の様子を交えながら報告されました。 LOHASを通じて、政策面では環境・エネルギー・福祉といった分野の統合や、個人の価値観と「あるべき」社会モデルの格差をどう埋めるかという課題が提示され、また、消費者がどのようなものを買うかを自覚した選択につながるとまとめられました。 続いて、COE研究員の上村雄彦氏から、LOHASは個人のライフスタイルから地域、地球を考えていこうとしているが、逆の方向性もあるのではコメントがあり、大量の資源消費国である日本で、地球環境を考えた地域の取り組みを紹介されました。取り組みの内容と主導は市町村行政か市民かいった視点からこれらの活動をパターン化して説明されました。参加者からは、日本ではLOHASやスローライフという言葉だけが浸透してしまうのではないか、所得の高い人だけが実践できるのではないか、持続可能な社会に向かっているのかなどと、アメリカ的文脈の強いLOHASは日本以外に広がっているのかなどの熱心な質疑が続きました。メディアが関心を持ち始めたテーマのためか、学生の参加が多く、しかも女性の参加者が大部分という対話研究会になりました。現在のアメリカにおけるLOHAS にはマーケティング手法としての色彩が濃いことに、フロアだけでなく國田氏も違和感を覚えておられるようでしたが、おしゃれなライフスタイルとしてLOHASを浸透させるという効果に注目されていました。地に足の着いた活動との違いを感じ取っていた参加者の様子が印象的な研究会でした。

2005年6月15日

千葉大学法経学部第一会議室

(野村眞弓)

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