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拠点リーダーからのご挨拶
拠点リーダー 廣井良典(法経学部教授)
現在の経済社会は、人口減少、少子高齢、地球温暖化など、大きな構造変化に直面しつつあります。しかし、その一方で、税制、社会保障制度など社会の根幹となるシステムは、従来のままであり、年金・医療・環境などさまざまな観点でひずみが生じつつあります。経済成長を前提とする社会制度を、成長を前提としない持続可能なシステムに切り替えていくための具体的な作業を緊急に必要としている状態といえます。
本拠点では、このような社会的要請に応えるべく、「持続可能な福祉社会(sustainable welfare society)の実現を研究の縦軸にすえた教育研究拠点を目指します。「持続可能な福祉社会」とは、個人の生活保障がしっかりとなされつつ、それが長期にわたって存続していける社会の姿を指します。これまで、「福祉」(富の分配をめぐる問題)と「環境」(富の総量をめぐる問題)はそれぞれ別の文脈において捉えられ議論されてきました。本拠点では、21世紀半ば以降に「定常型社会」を地球規模で実現し、またそこでの分配の公正を併せて達成するという人類最大の課題にとりくむために、「福祉」と「環境」の両方を視野に収めて教育研究を進めます。これは21世紀後半をにらんだ「グローバル定常型社会/グローバル福祉社会」の構想と呼びうるものです。
また、税制、社会保障制度といった経済社会の根幹となる制度を変えていくという課題に応えるためには、「政府」「公共」はなんのためにあるのかというレベルから問い直すことが必要となります。このために、本拠点では、哲学的・思想的研究者と経験的・実証的研究者との協働を進め、「公共哲学」及び「公共政策」を融合する実践的な学問を推し進めます。成長を基調とする資源集約型の経済社会は、新大陸の豊富な資源に支えられたアメリカ的な社会モデルといえます。本拠点では、オルタナティブな社会モデルを探求するため、アジア、ヨーロッパ、イスラムといった地域に関する研究を行うチームを擁し、歴史・比較研究を進めます。上記「公共哲学」「公共政策」とこうした「国際公共比較」を併せ、「公共研究」という新たな学問領域を創造していきます。
さらに、本拠点では、市民社会との直接のインターフェイスを確保する教育研究拠点を目指します。公共を中央政府が形成するという従来型のガバナンスは、地方分権・市民参加の波に洗われて、近年大きく崩れてきています。「持続可能な福祉社会」において「公共」が確保すべき「福祉」あるいは「公共善」の内容は、福祉・環境・平和などの公共的活動を行う公共的市民・NPOのニーズに立脚して定義づけられる必要があります。このため、本拠点では、市民参加のファシリテーターとしての研究者を養成し、市民にニーズ、地方のニーズを直接くみ上げることができる学問を推進します。
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