「理念――持続可能な世界を目指す、グローカルな公共研究」

公共研究センターは、持続可能な世界の実現を目指して、政治経済や環境・福祉・平和問題などの公共的でグローカル(地球的・地域的)な問題群に取り組む学際的な教育・研究拠点です。

21世紀の世界では、環境問題・貧困問題・紛争問題をはじめ地球規模の公共的な問題が山積しています。先進国でも国際関係の大きな変化やポピュリズムなどの現象が現れて、政治経済に動揺や混乱が生じています。

これらの問題に対して、千葉大学では過去15年近くにわたり、公共性を焦点として学際的な研究を進め、国内外の第一線級研究者たちとのネットワークを密にしてきました。そうした実績と背景の下、研究者と市民の知を結集した学際的な研究拠点として2004年に「持続可能な福祉社会に向けた公共拠点」として公共研究センターが設立されました。「公共研究」とは、公共性を実現するための、公共的問題についての思想的・経験的研究を意味しています。

2010年4月には地球環境福祉研究センター(通称 公共研究センター)となって2012年度からは大学院の院生向け教育プロジェクトを開始して教育活動をも担うようになりました。公共的な市民の育成や議論の活性化のために対話的教育にも力を注いでいます。私たちの公共研究の成果も評価されて、本年度(2017年度)から文系の大学院が人文公共学府へと改組されたので、これに伴って社会科学における中心的なセンター(共同教育研究拠点)の一つとして位置づけられ、正式名称が公共研究センターに戻り、大学院社会科学研究院付置の研究センターとなりました。同時に、大学院人文公共学府における「公共」の理念を支えており、人文公共学府ではセンター型プロジェクトを行って、その教育活動の一環を担っています。

さらに、2020年代に本センターは、私的・公共的ウェルビーイングの計測を行って公正や正義との関係を明らかにするなど、思想と実証研究を統合するような新しい領域を開拓しています。特に2020年代初頭、新型コロナウィルスが広がり、社会が大きな変化をとげるなかで、人々のウェルビーイングがどう変化したのか、どのような公共政策が望ましいのかを検討し、成果を挙げてきました。そして2024年度からは、社会科学研究院の全体の研究活動を推進すべく、法学や経済学との学際的活動をさらに進展させるために再編を行いました。

本センターでは「公共」を、「公」と「私」を媒介する概念として考えており、「民の公共」という概念のように、NPO・NGOをはじめ人々や民が公共的役割を果たすことを重視しています。この観点からすると、国家のような「公」も人々の「公共」に支えられるべきものですし、「私企業」と言われるような民間企業や市場経済も、その活動を通じて人々に広く貢献すれば公共的役割を果たすことができます。そこで、政治学・政策学とともに法学・経済学が連携して学際的研究を行うことが大切なのです。

そこで本センターは「公共とは何か」を念頭に置きながら教育研究を行うことにより、私たちの社会の今と未来を見据えて持続可能な世界を形成するために、グローカルな公共的問題の解決や公共的市民の育成に向けて、下記の目標を掲げます。

  • 研究者、問題関心を共有するNPOやNGOなどの市民や官公庁・企業との連携・協働を通じて、学際的にして実践的な知の発展を目指します。
  • 政治学、経済学、経営学、法学、社会学、公共哲学をはじめとした学際的な研究を推進させることにより、持続可能な世界の生成に向けて、環境・福祉・平和問題をはじめグローカルな公共的問題の解決を目指します。
  • 思想・哲学的研究と政策・制度的研究を連携させつつ、公共性の実現に向けての教育研究を行います。対話的アプローチも展開することにより、思想的・歴史的観点を踏まえて現実的・実践的政策を考えることのできる公共的市民の育成をめざします。(2024年3月更新)

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